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病気を治療したり予防するのに、運動がよいといわれています。 ほんとうでしょうか? ずっと以前には病気になると必ず「じっと静かに寝ていなさい」といわれたものでした。 たとえば心筋梗塞を例にとってみましょう。 心筋梗塞と診断されたら、ただちにすべきことは絶対安静であり、長い間ベッドに寝かされたまま、食事でさえ横になったままの姿勢ですませました。その後少しずつ洗面、歩行、トイレなどが許可され、数か月の後ようやく退院出来るのが一般的でした。 昭和40年頃から急性心筋梗塞の患者さんでも、むしろ、早いうちから前もって決められ たリハビリテーションのスケジュールで運動を開始する方が、結果的には早く社会復帰が 出来ることが分かり、また心筋梗塞本来の治療法が著しく進歩したこともあって、現在では運動療法は盛んに行われています。 このように心筋梗塞にかぎらず、高血圧、高脂血症、糖尿病など多くの生活習慣病の治療には「運動」が有効であることが分かってきました。 そして現在では運動療法は薬を使 う薬物療法、異常な部分を除去あるいは修復する手術療法と並び、病気の治療法として、ことに最初に行うべき方法として大きな位置を占めています。しかも、運動療法は病気の治療のためだけではなく、病気の予防、さらには健康の維持増進、そしてシェイプアップ のために、またストレスの予防や解消のために有効に生かされています。 ところで、運動はすればするほどよいのかといえば、これは違います。健康のための運 動は弱すぎてもきつすぎてもいけません。ではどんな運動をどのようにするのがよいので しょうか。 運動をするにあたっては、正しくは現在のあなたの運動能力や筋力、酸素を利用する能 力、心臓や肺の異常の有無などたくさんの項目を測定して決める必要があります(運動負 荷検査)。それ以上に大切なことは、「運動をする目的は何か?」です。スポーツ選手の ように記録の更新を目指すのか、いわゆる健康増進ないし疾病予防のためなのか、このことによって運動のメニューは違ってきます。前者ではかなりの激しい運動が必要ですが、 ここでは後者についてお話しいたします。 ところで運動の処方(メニュー)を作るときは運動の種類、強さ、量そして回数を決めなければなりません。
いわゆる有酸素運動をしましょう。有酸素運動とは普通に呼吸をしながらする運動で、 例えば歩くこと(ウォーキング)、軽いジョギング、サイクリング、水泳、水中歩行など 全身を使って行うものです。反対にぐっと息をこらえてする運動、例えば腕相撲、懸垂、ウエイトリフティングなどは血圧が著しく上がってしまい、心臓に強い負荷を強いるので 勧められません。ことに何らかの生活習慣病をもっている人には禁止すべきです。たとえ ば運動会での綱引きには絶対に参加しないことです。 歩く時にはクッションが柔らかく、しなやかに足にフィットする靴を履き、背を伸ばし、やや大股にそして腕を前後に大きく振りながら歩く姿勢がよろしい。 膝や腰が痛い人、超肥満の人には膝腰に負担が少ない水中歩行がお勧めです。泳ぐときには背中が反り返る形になる平泳ぎやバタフライは腰に負担が来ますのでいけません。む しろクロールや背泳がよろしい。
通常は脈の数を目安にして運動の強さを決めます。年齢別に脈搏数(心拍数)の上限を決め、運動中この脈の数を越さないように、しかしその脈搏数を維持する程度の強さの運 動をします。ここでは普通次のカルボーネンの式が使われます。 {(220−年齢) −安静時心拍数}×運動強度(k)+安静時心拍数 ここで運動強度(k)は健康増進の目的なら 0.5ないし0.4が一般的です。 たとえば40歳で安静時心拍数が一分間に60の人では {(220−40) −60)}× 0.4〜 0.5+60= 108〜120 すなわち一分間の脈の数が110ないし 120を越えない程度の有酸素運動がよろしい。 さて問題は運動の最中にどうやって自分の脈を数えるかです。運動施設では各機器に心拍数が表示されるようになっていますが、街を歩いている最中に心拍数を数えるのは大変ですね。こんな時には 5秒間の脈を数えるのが便利です。ちょっと立ち止まって5秒間の 脈を自分で数えてそれを12倍しましょう。 5秒間の脈搏数が10なら一分間では 120になります。ほとんどの場合には心拍数を120よりも多くする必要はありません。若い人では時 には最大130までと指示することがありますが、この場合でも5秒で11を越さぬ注意が大 切です。 実際にはこの程度の運動ではほとんどの人が物足らないと感じます。でもこれで十分なのです。 ところで薬を飲んでいる人の場合は、脈搏数は参考にならないことがあります。そのようなときには、心拍数をその都度測ることはせずに、自覚的運動強度(ボルグ・スケール)を利用することがあります。難しい言葉ですが、要は自分で感じる運動の強さを目安にすることです。 その人にとって最も適切な強さは 1)わずかに息が切れるが、横にいる人と会話が続けられる 2)うっすらと汗がにじむ 3)このままの運動をあと20分は続けても平気 な程度がよく、おおよそこの辺りがその人にとっての最適な心拍数になっていることが多いようです。
一回あたりの運動量として最低30分間は続けたいものです。それは短時間の運動では体 脂肪はあまり使われないからです。体の脂肪を減らす目的なら(ほとんどの場合はそうで すが)なるべく30分間は続けましょう。これを一週間に 3〜 4回、時間としては合計 120 分以上がよろしい。この時には必ずしも運動施設を利用しなくてもよく、歩くことで十分です。30分が無理な人では昼休みに10分づつでもよいからなるべく歩く習慣をつけましょう。また歩数計をつけてみましょう。普段の自分の歩数を知って先ずはその2割増しを目指しましょう。一日に5000歩しか歩いていない人ならまず6000歩を目標に。そして1万歩を越すようになればもうOK、ぜひともこれを続けましょう。 健康の保持、生活習慣病の予防には健康運動が大切です。ぜひとも適切で安全な運動をいたしましょう。 要約すると健康増進のためにするときの運動の注意は次の5つです。 1)必要以上の激しい運動はかえって体を壊します。すこし物足らない程度が最適です 2)息をつめるタイプの運動をするとひどく血圧が上がることをお忘れなく 3)決して他人と競争をしないこと、運動のメニューは一人一人違います 4)30分以上の運動が理想的ですが、数分の運動でもこまめにやりましょう 5)必ず準備運動(ウォーミングアップ)をしてから開始し、最後には整理体操(クールダ ウン)をすること。そして必ずストレッチをすることです。ストレッチは運動で疲労し縮 んだ筋肉内の血行を改善します そして決して急ぐことはなく、しかし確実にしかも定期的に安全な健康増進のための運動をいたしましょう。 このように運動をすることは健康にはよいことですが、その内容が適切でなければなりません。もし間違ったメニューでの運動をすればかえって体を傷めることもあります。したがって必ず運動療法に詳しい医師や運動指導者によく相談してから始めましょう。
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