![]() |
![]() |

|
院長 宮崎豊彦 www.akasakamitsuke-miyazakiclinic.com |
| 本邦における平均寿命は年々伸びてきており、「人生80年」という本格的な高齢化社会となっています。現在、女性の平均寿命は85.33歳、一方、閉経年齢は平均50.54歳ですから、約30年にも及ぶ閉経後期間をいかに快適に、さわやかで充実した毎日を過ごすかは女性にとって重要な問題です。特に、いわゆる「更年期障害」は閉経、つまりエストロゲンという女性ホルモンの消退に伴い現れる不快な症状として知られています。しかし、この「更年期障害」という言葉は一般の人々にも馴染みの深い言葉であるにも関わらず、「更年期障害とは何ですか?」という問いにすぐに答えられる人は少ないように思われます。 |
| 更年期とは |
| 女性のライフサイクルは卵巣機能の変化と密接に結びついています。更年期とは「生殖期から生殖不能期への移行期である」と定義されており、これは卵巣の活動性が消失し、永久に月経が停止する閉経の前後の期間に相当します。閉経とは1年間月経がない場合をいいますが、わが国における閉経年齢の中央値は50.54歳と報告されていることから、年齢的には45〜55歳ぐらいが更年期の時期にあたります。 |
| 更年期症状と更年期障害 |
|
更年期の時期は卵巣機能の低下、すなわち女性ホルモンであるエストロゲンの消退による影響に加え、加齢による影響、さらには心理的影響や環境・社会的な影響が加わるため、身体的にも精神的にも不安定な移行期にあたります。このため、この時期には各種不定愁訴が出現します。しかし、更年期の時期はすべての女性が通過する年代であり、大なり小なり愁訴は出現するはずです。そこで、愁訴のうち日常生活に支障を来すものを更年期障害として治療の対象とし、日常生活に支障を来さない更年期症状と区別します。 一言で「更年期障害」といっていますが、その実態は様々な症状が含まれたいわゆる不定愁訴症候群です。その症状はのぼせ、発汗など身体的症状である自律神経失調症状と神経質、ゆううつといった精神症状の2つに大別されてはいますが、クリアカットに実際は分けられるものではありません。さらに悪性腫瘍やメニエール病、躁うつ病などのような疾患によって引き起こされた症状の一部も更年期障害とされている場合があります。更年期障害の原因もエストロゲンの低下が一番大きな原因であることには異論はないものの、心理的・精神的要因や社会的要因の関与も無視することはできません。つまり、女性ホルモンの消退に伴う自律神経性要因、対人関係や家族の問題などの社会的・環境的要因、生来の性格や生育歴などの心理的・性格的要因が複雑に絡み合って、多様な症状を発現しています。このように症状、要因ともに絡み合っていることが、更年期障害の理解と把握を複雑かつ困難なものにしているのです。つまり、更年期障害は七色の糸が絡まってしまった毛糸玉のようなものだといえます。 |
| 更年期障害の症状 |
| 更年期障害としては従来、のぼせ(ほてり)・発汗・抑うつ・不眠などが多いとされていましたが、近年の調査では、わが国における更年期障害の実態は疲れ易い、肩こり、冷えといった身体的症状が多いなど、欧米の報告とはやや異なると考えられています。 |
| 更年期障害の治療法とその選び方 |
|
更年期障害という言葉が卑近なことから、治療法もたくさんあるように誤解されがちですが、それほど多いわけではありません。薬物療法としては、消退したホルモンを補うホルモン補充療法(HRT)、漢方薬を投与する漢方療法、精神科的な薬物を使用する向精神薬療法、特に最近注目されている選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を用いる方法などがあります。一方、薬物を使わない方法としてはカウンセリングや心理療法などがあります。 それぞれの治療法には必ず長所・短所があり、効果についても偏りがあります。HRTはその効果の高さから数年前までは頻用されていましたが、アメリカでの大規模研究により乳がんや血栓症などの副作用の問題が指摘されてから慎重に投与されるようになってきています。医師は患者さんの状況に応じて種々の治療法を使い分けています。副作用のない薬剤はないことからリスクとベネフィットを秤にかけて治療法を決めます。主治医の先生とよく相談して納得した治療を受けることがなによりも重要です。 |
| おわりに |
|
更年期医療における現状での最も大きな問題点は正しい啓蒙活動の不足です。あるアンケートによると中高年女性が更年期に関する知識を仕入れるソースとして最も多かったのは友人、次いで週刊誌であったそうです。病気に対する正しい知識と理解が必要であることは、何も更年期障害に限ったことではありませんが、精神的な因子の関与が考えられる更年期障害では特に重要なポイントであると思われます。しり込みせずに医療機関を受診しましょう。 科学技術の進歩と共に、更年期障害の治療にも新しい風が吹き込んでいます。更年期障害の治療の進歩により今後ますます中高年女性のQOLは向上することが期待されています。 |