■ 2009年に発生した新型インフルエンザ(H1N1型)の基礎知識 

いつか発生すると言われてきた新型インフルエンザですが、それは2009年4月に発生しました。メキシコで発生した新型インフルエンザは、予想されていたインフルエンザと少し異なっていました。

新型インフルエンザは、鳥由来のインフルエンザ(H5N1)だろうと予想されていたのですが、「豚インフルエンザに最も近い」、「豚から人にうつった可能性が大きい」など、豚由来と考えられるインフルエンザ(H1N1)だったからです。

ところで「新型インフルエンザ」とは何でしょう?「新型インフルエンザ」とは、「季節性インフルエンザ」(毎年冬になると流行するインフルエンザ)と抗原性が大きく異なるインフルエンザであって、一般に国民が免疫を獲得していないことから、全国的かつ急速な蔓延により国民の生命および健康に重大な影響を与える恐れがあると認められるものをいいます。

新型インフルエンザといえどもインフルエンザですから、症状も「突然の高熱」、「咳」、「咽頭痛」、「倦怠感」に加えて、「鼻汁・鼻閉」、「頭痛」など季節性インフルエンザに類似しています。但し、季節性インフルエンザに比べて、嘔吐・下痢などの消化器症状が多い可能性が指摘されています。

新型インフルエンザの治療法は、主に抗インフルエンザ薬(タミフルとリレンザ)で、医療機関で医師が必要と認める場合に処方されます。季節性インフルエンザに比べて、インフルエンザ簡易判定キットでの検出率が小さいとも言われており、キットの判定を過信しないことが重要です。抗インフルエンザ薬以外には、症状を緩和させる目的で解熱薬、去痰薬、鎮咳薬が処方されます。妊婦や乳幼児に対する処方は、副作用の危険性を考慮しながら医師が判断します。

気になる重症度についてですが、例年のインフルエンザの感染者数は国内で推定約1,000万人で、約200人から多い年で2,000人近くの方が亡くなっているのに対し、新型インフルエンザの死亡者は2009年12月22日までで128人に留まっています。

その理由としては、1.新型インフルエンザが国民的関心事になっており予防や早期受診など意識が高まっている、2.国民皆保険が罹患した際の早期受診を後押ししている、3.我が国には抗インフルエンザ薬:タミフルとリレンザが潤沢に備蓄されており有効な治療で対応できているなどが考えられ、一概に病原性や毒性の強弱について結論を導くものではありません。

さて新型インフルエンザの予防ですが、一般的なウイルス感染予防と同じです。手軽にできるものとしては手洗い・うがいです。手洗いは石鹸を使って最低15秒以上行い、洗った後は清潔なタオルで拭き取ります。意外な感じがしますが、石鹸で洗うだけでウイルスの構造が壊れるので手洗いは大変有効なのです。ウイルスは粘膜を通して感染するため、極力鼻や口に触らないようにします。咳、くしゃみの際は「咳エチケット」も感染防止の上では大切です。咳や、くしゃみがある人はマスクを着用しましょう。

優先接種も一段落し、一般接種が始まった(平成22年1月18日現在)新型インフルエンザワクチンも予防に重要ですが、感染を完全に抑えることはできません。重症化や死亡率の低下が期待されますが、何分初めてのワクチンなので効果や副作用については今後の報告が待たれます。

以上、平成22年1月現在、次第に分かってきた新型インフルエンザ(H1N1)の情報をまとめました。報道は死亡記事が中心になるため不安ばかりが先立ちますが、我が国が戸惑いつつも新型インフルエンザに対応し、感染した方も、ごく一部の方は不幸な転帰をたどりましたが、大多数の方々が病気から回復し、日常生活に戻っています。今後も「恐れず、奢らず」、新型インフルエンザに冷静に対応していきましょう。

藤田耕一郎

港区医師会